2007年 02月 04日
2007年1月31日~2月4日 札幌市民ギャラリー 【終了】 札幌大谷学園開校100年記念美術展を「おおたにの100点」と題し、厳選の100作品を展示した。 高校、短大美術科の卒業生と教授陣、講師陣が作品を並べている。 講師として、北海道美術界を始めとする一流の作家が開校から今に至るまで出講している。 まことに恵まれた学校だ。 開催告知のA4リーフレットだ。デザインに驚く。CMYKの4色だけを使った大胆というか 普通のデザイン経験者ならまずこの冒険をしないだろう。 でも、仔細に眺めて行くとデザイナーの意図にわずかながら近づくかも知れない。 まず、紙の四隅を幅3ミリほどのマゼンタ(実際は赤)で囲んでいる。 同色で横10、縦16(20×18㍉)のグリッドに仕切っている。これによって少しシアンの強さを緩和している。 それでも強い、はっきり言えばどぎつい印象は変わらない。 真ん中に横4、縦12のイエローのグリッドを配置して、テキストを集中して配置している。 これもどぎつさの緩和だろう。 同様のデザインで葉書もあるが、札幌市民ギャラリー以下の文字の配置が微妙に違う。 160枚のグリッドのエレメントは主に今展の作品をトリミングしてさらに2値化したスミ版で埋めているが、向かって右から左下に斜めのエムプティーのマスを3枚配置している。この操作によって安定化を意図したもののようだ。テキストもこの流れに沿っている。さらに下部にはグリッドの2段目までをグラデーションでマゼンタの10%くらいから網掛けしている。彩度と明度を下げることによって下部の安定化を図ったものだろう。右下隅は少し濃いめの印象を受ける。 右斜め上方から左下隅に視線を誘導し右隅まで流れさせているような意図らしい。 上の写真の小さい方はエムプティーのマスの一枚だ。 シロ抜きで 『おおたにの空/photo:morita/2006/12/26 16:30:46』 と記載されている。 昨年の12月26日の大谷学園から見上げた空を写したもののようだ。 12月26日は冬至から4日後である。しかも16時半を過ぎた札幌の空は おそらくこの色のように濃いシアンだろう。もっと暗かったかも知れないし 晴れていたのかも分からない。 だが、この色からこのリーフレットのデザインは出発していると解釈するのが妥当だろう。 北国の抜けるような深い黄昏色の空。何もないところからの開拓。そこから64年に伊藤正教授など関係者の人脈と熱意によって本道に於ける私学女子芸術教育のパイオニアとなるという意志が強く感じられる。 この10年ほどは日本ではリーフレットのデザインは白基調のソフトな印象の傾向にある。 穏当ではあるが裏を返せば簡単だと言うことも言える。 パソコンで版下を作り、オフセットフルカラーが安価で身近な現在、昔のシルクスクリーンを駆使したポスターはデザイナーの知識と技をフル稼働したものだった。今回の色数の制限とその制御は、敢えて課題を設定し困難に打ち勝つという骨太の企画だ。 企画の安全を優先する現状にこのリーフレットの作者は警鐘を鳴らしたのではないかと思う。 『挑戦せよ』 筆者にはこれが合図のように感じてならない。 今展は、あまり広く告知されなかったようだが会場は華やかなしかしシッカリした作品にあふれるものだった。まるで道展の会場を思わせるほどの水準の高さであるし道展や全国展の会員作品があふれる事実は、大谷短大の卒業生の水準の高さを雄弁に物語るものだと思う。 『2年間で、身をもって美術の本質にふれた貴重な体験をすることが出来ると思っている。少なくともだらだらした4年間より効果は上がるとも言えるのである。』 多分に特美を意識した言葉のようでもあるが大谷の学生に向けた故伊藤正教授のはなむけの言葉(66年卒制展)である。言葉通り貴重な授業を受けたに違いない内容の濃さであったと思う。特美とは協調関係にあったようで伊藤正氏や小谷博貞氏が特美に出講したり、特美から川井担氏が出講したりと相互の教授が関わっていたという。 札幌美術学園もそうだったが、道展をバックボーンにして色々な一流の先生達に教えられた本道での美術教育は恵まれた状態であったように思う。 (text :naoki KAWAKAMI rewrite 10/Feb.14.41)
by kotendesky
| 2007-02-04 23:28
| ギャラリー放浪記
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