2006年 11月 14日
ワトソン水彩紙に油彩を描くと言うことは、下地をきちんと施す必要があるらしい。 油彩は酸化重合という反応で乾燥(正しくは固化)するので、成分の染みこむ支持体自体も酸化する危険がある。 もともと、板や麻布、綿布などを使ったというのは丈夫な支持体であると言うことと、下地塗装と密接な関係があるのだろう。 板はもっとも下地を施しやすいが大きな板は継ぎ目無しに入手できない。 麻布や綿布などは下地の塗装が繊維に絡まり好都合でありそれと共に大きな画面でも絵の具の剥落が起きにくい。 では、紙はこの種の問題を克服できないのだろうか。 写真は東京芸大美術館所蔵、高橋由一の「鮭」である。 鮭図は1877頃の制作となっている。由一自身の作ではないとする説もあるが、いずれにしてもここでは作品の出自を問題にしているのではない。 右はX線像であるが、裏打ちに桟が縦横に渡してある。鮭図の文献には色々の説明(板に油彩、油彩・キャンバス)があるが、芸大のクレジットでは「紙に油彩」となっている。 これは由一の鮭図が北大所蔵をはじめとして10点ほど確認されており、それらが混同されているためであろう。 唯一芸大美術館の所蔵は出自がはっきりしており、ほぼ由一のものに違いないと思うがその支持体は紙であるというのが特徴的である。なお、北大のものは板に油彩である。 筆者は芸大の実物を見たことはないが、上半身は油彩の粘りを強調した厚塗りらしい。 100年も前に紙に油彩を用いてマットな画面を追求していたことは驚きである。しかも現在まで大きな修復無しに作品を保っているとすれば、支持体に紙を使ってもメディウムと支持体(紙)の間に膠や石膏などの相当な厚みの下地を施すことによって、紙そのものの酸化は有る程度防げると言うことではないだろうか。 実は、筆者がワトソン紙の模索を始めたのには理由がある。 一番大きな理由は「年齢」なのだ… (つづく)
by kotendesky
| 2006-11-14 00:36
| (七転八倒)制作記!
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