2011年 03月 17日
祈り-温もりに包まれて この絵を解釈する上でキリスト教の絵画におけるシンボルを知っているとより意味が理解できる。 この絵の最大の特徴はパネルの四隅を小さなパネルで仕切り、全体を十字にしつらえている。 四隅の小さなパネルはキリスト教で重要な意味をもつ鳩の飛翔であり言うまでもなく平和の象徴あるいは 祝福の意味である。その示す先は女性の体の中心であり同時に画面の真の中心である。 画面の左右の百合は純潔を表す白い花が描かれており、向かって右は開花状態で左は少し枯れた状態である。 赤子のためのゆりかごの中のリンゴは描かれるシチュエーションにより意味が異なるようだが、この場合は 赤い色と置かれた場所からすると祝福あるいは幸福を表すものだろう。 中央の女性は懐妊しており新しい生命を慈しみ誕生を待ち望んでいる。少しの不安をはらんで… シンボルが表す意味は説明的で直截の度合いが強くそのままの解釈で良いと思うが、 全体の背景は暗く沈んでいる。その意味は不安な世の中にあり、その中から新しい誕生を待ち望む 希望の意味合いが強い。 基材は綿布で、ジェルメディウムで固着されており画材はミクスドメディアとなっているからアクリルの上に 油彩を施しているものだろう。 左右の百合を受け持つのは描かれた限界の台座である。この描き方も画題のはかなさと不安さを 意味するものだろう。 絵画表現というものは作品の全体を貫く主調を軸にその意味を強化して行く作業だから誕生をとりまく 祝福の表現をとおしてタイトルになったものと思われる。 この絵は2009年の損保ジャパン秀作賞を受賞した。 なお、この作品はパネルまでが作品ではなく周囲の箱形の枠までが作品である。
by kotendesky
| 2011-03-17 20:34
| ギャラリー放浪記
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