2010年 07月 14日
『軌跡』という言葉はあるいはこういうことを指すものなのかもしれない。 瀬川葉子さんの個展を観て、ひとりの美術作家の変遷あるいは作品のたどってきた変貌というような感覚を抱いた。 瀬川さんは教育大特美を卒業して、若くして道展を中心に才能を開花させた作家である。 筆者は道展での作品しか知らないが、新人賞を得て協会賞を獲得するまで順調に伸びてきた作家であったように思う。 あるいは、道展のレールというものがあるとしたら、きわめてなめらかに会員までの本線上をたどってきたと言える。(道展はその後退会した) モチーフはフリーハンドの曲線あるいは円弧の集積であり、抽象であっても決して絵画の面白味あるいは美術作品から得られる品格というものを裏切らない、作品としてのまとめ方をわきまえた作家である。 ◇ 筆者は30数年前に札幌美術学園の夏期講習から引き続いて通学するようになり、瀬川さんとは同じ時期にデッサン室に通っていたのだが、交流はなかった。 当時札美は夜間のコースがあり、所属するコース以外に日中も通って良いと言われていた。 美術学園に通う生徒は大まかに言って3つのタイプがあり、昼から何となくアトリエにいて他人のデッサンを観ることの方が多い者、授業を抜け出して数人で外に遊びに行く者、毎日決まったように来て凝縮した2時間をデッサンに打ち込む者である。 筆者は1番目か2番目のタイプであり、瀬川さんは3番目のタイプである。 当然、デッサンはうまくおそらく10番以内に位置していたように思う。それは受験の際にも同じであり彼女は悠々と合格した。 ◇ そのことを瀬川さんに話すと、『そういう時期もありましたねえ』とこちらの意図を計りかねるというように静かに答えられた。 それほど華々しく宣伝をしたわけではないのだろう、今回の個展は瀬川さんにとっては北海道での新たなスタートなのかどうかを知ることは出来ないが、何となく自分自身のために開いたもののように思えた。 ◇◇ コンチネンタルギャラリーのA,B両室を使って、A4あるいはB4変形の紙を支持体にしたアクリルでの抽象を様々な組み合わせで部屋全体を構成した。 多くは透明アクリルのフレームに納められており、入って一番奥の壁全部をつかって紙を直接ピン留めにしてやや大型の構成をしている。 北海道美術ネットの一番下の写真がそれだ。 その中心に、スパイラルでコップ状あるいはロート状に描いた図形があり、おそらくその形状が今回彼女が行き着いた主題の総括であると思う。 2,3目立ったスパイラルの線描があり、いずれの作品も他より優れているので話題にしたら『吸い込むような雰囲気が気に入った』というような趣旨で答えられたと思う。 紙はコート紙やケント紙のようだが、様々な用紙を使っているとのこと。 ほかのマテリアルはホットボンド(ヒーティンググルー)、アクリル、水性マーカー、油性マーカー、パステル、さらにはデコパージュに使用する材料も使っているということだ。非常に美しい銅色をした細い線があり、印象が強いので質問するとアクリルでは印象が弱いがデコパージュだと強く描けるということだった。 小さな作品のことをあえて尋ねると『机の上でも出来る』という理由からだそうだ。 公募展を中心に生活していると、絵を描くと言うことが巨大な作業となり広い場所、モノ、時間の配分に苦労ばかりして、なかなか思ったような活動は出来ないが、机の上で出来る作品という枠をあえて当てはめて広い世界を創る修練を忘れないというような気にさせられた。 画像は北海道美術ネットの記事を参照してください。 コンチネンタルギャラリー(2010年6月29日~7月11日)=終了
by kotendesky
| 2010-07-14 23:17
| ギャラリー放浪記
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