(ときどき)個展deスカイ!

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2006年 10月 08日

ある作品

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アトリエの壁にこの絵が掛かっている。
何の飾りもない水彩画だ。
クレヨンで何色かの線を引き水彩で色づけしている。
タイトルは「冬」だ。

間に合わせに写真のフレームに押し込んでそのままになっている。

実はこの絵は2年前の冬に「さいとうギャラリー」で展示された際に購入したものだ。
正しくは、名寄市のあるグループの展示で気になったので、購入を申し出たところ、この作品は販売対象外とのことであきらめたものだ。
一週間ほど経っても作品が気になり、問い合わせ先に電話をした。
ちょうど絵の指導をしている方が居らしてその作品を購入できるかどうか描いた本人に聞いてみるとのことだった。
数日して、応諾の丁寧な書簡が自宅に届いた。
すぐに購入したことで、この絵は私のアトリエの壁に掛かることになった。

じつは、作者は重度知的障がいで同市の施設に入所している方だ。私とほとんど同い年だという。
Sさんと言う名を展示の時に聞いていた。

さきにも書いたがこの絵の題は「冬」となっている。
厳しい名寄の冬を窓の中から描いたものだろう。オレンジや緑のラインは部屋の暖房の揺らぎのようにも見える。
バックの黒やピンクやグレーの彩色は、窓外の木立か何かだろう。
あるいは冬という簡単に野外に出られないもどかしさの象徴かも知れない。
不思議と作者の穏やかな視線が冬の厳しさを観察する中から見えるようだ。

素直と言えばこれほど素直な絵はない。

多分「S」さんが手にしたであろう私の払った数千円は、彼の一生涯で自分の才覚で得た一番まとまった金額だろうと思う。


抽象形態は私の好きなジャンルのひとつだが、この絵の素直さに感動した私は、自分の作品に詰まった時、
「S」さん…と語りかける。
『駄目じゃないか、しっかりしろ』と答えてくれるような気がする。

作者と作品購入者という絆で全く見ず知らずの「S」さんと私は強く心が結ばれた。絵にはこうした力がある。
手放せない絵の一つだ。
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by kotendesky | 2006-10-08 00:22 | 冗舌亭日乗


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