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2006年 09月 06日

大路 誠展  〔ギャラリーどらーる/9.1~30〕

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大路誠さんは広島市立大学大学院博士後期課程(造形芸術専攻)を修了した。
1976年大阪市生まれというから、今年で30歳になる。
2001年から6年間、銀座の東邦アート他で同大学の卒業生選抜展に出品し、どらーるの坂本社長の眼に止まった作家である。毎回必ず札幌からの芳名帳記名があるので不思議に思っていたところ、思いがけず今回の個展開催が決まったとのいきさつだそうだ。

大路さんは徹底したリアリズムの中にメッセージ性を吹き込み、観るものを飽きさせない力量の持ち主だ。
吉田豪介氏は個展の紹介文に次のように書かれた。
「…この深い静けさを演出しているのはテンペラと油彩の混合技法である。(中略)…彼が捉えようとする本質は、生きとし生けるものたちが宿命として抱え込む死生観だという。必ず訪れる死を嫌悪するのではなく、はかない生をいとおしむ時こそ美の感動が磨かれるというのだ。」

この文章で言っている作家の死生観は、むしろ生を賛美し、生と死の連綿と続くこの地上の物語の穏やかさ平明さをあえて抑えたタッチで物静かに語っていると思う。
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上から肖像(継承)P20、連鎖M50、肖像(影)P20である。
この3点の作品が壁の一面に左から順に並べてある。
文字通り連鎖は命のつながりである。
左に肖像(継承)の女性が居る。彼女は被爆者だという。継承という注釈はその年齢から考えて胎内被爆と推察されるが、作者はこの注釈に加えて女性の緊張した肩や手の組み方をあえてリアルに描いている。
もう一方の老男性が描かれている方は注釈が(影)となっている。彼が生きた人生の投影にあえて被爆現場写真の人影のように横向きの形象を用いている。
本来なら人物への光の当たり方からしてもう少し下方に影は出来そうだが、敢えて等身大とも言える部分にしかも濃い影を投影させている。
そこに、作者の意図する原爆への抗議が示されていると言う気がする。
あるいは作者はそのようなことを全く意図していないかも知れないが、強い影を肖像画につけたという点にこの絵画の目的があることは明白であろう。
この2点は所属していた研究室のプロジェクトで、毎年院生がヒロシマ被爆者の肖像画を描き、まとまった数を将来はアメリカで展示される企画のものだそうだ。
その中心にそのキャプション通りの絵がある。「連鎖」である。
時計が内臓をむき出しにされ、羽毛と貝殻が細い麻ひもでつながっている。
時計は明らかに現実世界を表象し羽毛は死あるいは霊魂を示し、貝殻は静寂を強調する。その棚を麻ひもがつなぐことで、作者は生命の継承のみが持つ武器への穏やかで無言の抗議を表したいのではないかと思える。
麻ひものリアリティーは、本質に迫ろうとしてむしろ本質を超越した存在の高みに達したのではないかとさえ思わせる。(下図=拡大)
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もう一点は「生命」F100である。(下は部分)
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この毛髪は0.1から0.2ミリほどの細い線だが、作者は執拗なまでに本質に迫ろうとしている。
髪は白、セピア、黒へと変化するが、本質に迫ろうとしてむしろ現実から一歩踏み出そうとしているようにさえ思わせる。本来なら若い女性の黒髪のしなやかさを描くところだが、毛先は観ようによっては老婆のものに見えるのは、時間の流れを意図したものだとしたら、この作者の慧眼はただ者ではないように思わせる。
その他、花葬(S30)、水源(M30)、朧月(S30)も佳作である。

(画像は許可を得て撮影したものである)
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by kotendesky | 2006-09-06 04:24 | ギャラリー放浪記


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